無荒史談100-天皇機関説考-軍部専横時代(上) ― 2008/07/12 21:33
日露戦争後の軍部は、軍事政権の樹立をもくろんでいる。その形は天皇-軍部-3権の形式を確立することであり、過激なグループは、大日本国憲法の廃止すら考えていたのである。
軍部は希望する政治システムを実現する為に、天皇の勅語を希望している。また、その過程に置いて政財界の指導者の粛清も見据えているのである。一方で極右勢力がこれに同調してテロを頻発し、最後は2.26事件のような反乱にまでエスカレートしている。これはさすがに政治に介入しないことを心がけられていた昭和天皇が「反乱」と決めつけられ、その後は極端な暴力はなくなったようだが、軍部の勢力強化そのものは着々と進んだ。
このプロセスで必要とされたのは天皇の神格化であった。この為には「天皇機関説」が目障りと考えられたのである。ところが軍部のやっていることは、天皇機関説そのものであり、4権分立の代わりに天皇の下に軍部が政権を持つという構図であった。勿論天皇は軍事政権の一つの機関に過ぎなかったのである。
極右勢力の横暴により、有能な人材が殺され、あるいは変節し、マスコミも迎合するに及んで、軍部の意図したものは実現したのである。その結実は「大日本翼賛会」であった。しかし、その結果は営々として構築された大日本帝国の崩壊に終わったのである。
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