肉弾-TVドラマ「坂の上の雲」考2011/12/12 17:55

第3部の前半が終わった。壮烈な旅順攻防戦か可成りの部分を占めた。

ところで司馬遼太郎氏が「坂の上の雲」を執筆する時に使用しなかったものがある。何故使用しなかったのかは今では良く分からないままである。

それは桜井忠温歩兵中尉(当時-後少将)著作の「肉弾」である。世界15カ国語に翻訳され、明治天皇、ドイツのウイルヘルム二世皇帝、米国のセオドル・ルーズベルト大統領に感銘を与えた作品である。

桜井中尉は松山出身でかつ当時松山歩兵22連隊に所属した。この連隊は11師団に所属して旅順攻略戦の先頭に立ったのである。最前線で突撃を指揮した桜井中尉は敵弾で右手首をなくすという重傷を負った。戦死者と間違えられ火葬されかかり、実家には戦死の公報が届くほどであった。

肉弾はこの体験から書かれたものである。刊行は明治39年である。通常は退役となるところ報道担当することでずっと現役を続けている。また、肉弾に続く文学作品もあり、絵画にも巧みであった。

「肉を以て弾とし、血を以て硝薬となす」ということで壮絶なる戦いを表現し、そこから「肉弾」という語を造ったと言っている。

ドラマの中で軍の首脳が”肉弾”と言っているのを見て「おや」と思った。また。主人公の後輩や出身地のことをここで触れられなかったのも残念に思う。