無荒史談43-逆臣の尊皇-付属-二位の尼2008/02/05 19:04

中世の歴史書「愚管抄」には「ユユシカリレル女房也」とある。彼女の行動は空前絶後と言える。日本史全体を通じて唯一の事件を起こしたと言えるものである。

彼女は平氏と共に天皇制そのものが滅びる様にしたのである。三種の神器の内,宝剣を腰に差し、勾玉を懐に入れ、安徳天皇を抱いて入水した-幼少の天皇と無理心中した-のである。幸い勾玉は、見つけることが出来たが、宝剣はついに見つからなかった。

仮に安徳天皇がご存命であったとしたら、皇位より離れた皇族として生涯を終えられたであろう。その他の同じような運命の皇族の方と同様に。

三種の神器のもう一つの神鏡は、無事に船中から回収できたので、宝剣のみが失われたことになる。宝剣紛失の件について、宮中にあった宝剣は熱田神宮にある本物の代わりの品であるから構わないと言うことを北畠親房は述べているし、武士の世になったので宝剣は必要なくなったと慈円は述べている。

三種の神器を粗末にした例はこの外にはない。南北朝の混乱期でも神器は大切にされ、両朝統一の際にも譲渡されている。廃棄しようとしたのは二位の尼をおいて他にはない。

戦前の教育で二位の尼に関して悪役扱いしたのは記憶にない。しかし、当時の教育方針から見れば最大の逆臣として扱うべきではなかったろうか。

逆臣達の尊皇の項終わり